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西野M邸

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□はじまり


昨年の暮れに、土地探しから始まった計画です。
2月中旬から、月に1,2回のペースで見学し、3月後半に、
そろそろ、総括して候補地の絞り込みに入り、最終確認中の
4月中旬に『これは!という感じの土地です』という不動産屋
からのメールがあり、《一目惚れ》で決まりました。
冬場の土地探しは初めてでしたが、積雪の状態や道路の
除雪状況を確認することが出来、設計者にとって、とても良い
時期だということがわかりました。
土地を一緒に探すケースは度々ありましたが、土地を見ながら
『未来の家』をお客さんと話をする時ほど、楽しい時間はありません。
お互いに想像力・創造力を働かせ、自由な発想を無責任(?)に
話し合うことが出来る醍醐味は格別です。土地が決まる頃には、
お互いの価値観をだいたい共有できるようになります。
『これは!』という土地の決定打は、発寒川緑道公園に
南東二面(約33M)接していて、尚且つ、敷地より5Mほど
下がっているので景観も日照も遮られる心配なく三角山や
小別沢の山並を見渡せるところです。
さて、どんな家が出来、Mさん一家4人のどんな生活が
始まるのでしょうか?
もう、無責任な発言は出来ませんね(笑)。じつは、西野緑道は
愛犬・菊次丸の散歩コースでもあるのです(関係ないかな?)。


□敷地写真





□まずは土地探しからスタート!(09.12〜10.04)



昨年の12月から土地探しを始め、合計10ヵ所位一緒に見て
廻りました。時間を変えて3回ほど見た敷地も複数あります。
敷地を見ながら、
『この敷地だったら、こんな建て方がありそうですね?』
『この木を残してコートハウスに出来そうですね?』
『二区画買って、建売分譲したら面白そうですね?』
などと、未だ見ぬ住まいの話をしていましたので、気に入った
敷地が見つかってから具体的な計画の提案をするのに、さして
時間は掛かりませんでした。

《Mさんの要望》

@集いやすい家
A特徴のある家
B家事のしやすい家
C家族の顔が見える家

《敷地の特徴》

@分譲区画の突当たりに位置する台形に変形した区画
A東・南面が緑道公園に33M面し、公園から約5M上がっている
B東に三角山を望み、時計回りに120度小別沢山系が連なる
C緑道公園の斜面は樹木が植わり、夏は緑の壁が木陰をつくり、
  冬には落葉してモノトーンのタペストリーとなり、景色を演出する
D北に面する道路は緩い勾配がある

□基本計画 (10.04〜10.08)


A案:家事の効率を最重視し、玄関ホールを土間空間にし、茶の間と
    台所を一体に使えるようにし、廻り階段で緩やかに仕切る








B案:前面道路の勾配を利用したスキップフロアの案
    西側に通り抜け雁木通路を設け(奥様の提案)道路と公園を繋げる







共通条件:食を中心とした生活を最優先=最小限個室
        緑道公園との一体化(空間・視覚とも)

□検討結果(10.09.21)

 検討の結果、隣接する緑道公園に通り抜け雁木通路があり、
リビング・ダイニングなどの主要室を2階に配置し公園と一体化
させ、土地の特性を取り入れたB案に決まりました。
 2階は、リビング・ダイニング・プレイルームを一体の空間とし、
床レベル差でそれぞれのスペースを緩やかにつないでいます。
キッチン・趣味の裁縫スペースよりプレイルームで遊ぶ子供たちに
目の届く計画です。
 リビングからプレイルームへの通路は、玄関上部にブリッジを浮かせて
渡していましたが、リビングに併設させていた勉強スペース
を分離し、ステップを1段増やし公園を眺められるスタディルームを
リビングとプレイルームの中間に増設しました。
 リビング・バルコニーを2階に計画することで、隣接した公園の樹木を
眺めることができます。さらに、屋根の上に三角山と夜空の星を眺める
塔屋を計画しました。
 当初の提案よりスタディルームや塔屋などの空間が、2階の
空間に加わり魅力的な計画となりましが、プラス要素が増え、
予算をオーバーしてしまいそうで気がかりです。

 
北側前面道路                  公園へと繋がる通り抜け雁木通路
 
西側隣家側から見た雁木通路2階バルコニー    公園側からの眺め
 
公園側より1階ウッドデッキと2階バルコニーの眺め   内部2階プレイルームとリビングが一体の空間
 
内部2階・塔屋越しにリビングを見下ろす       内部2階・塔屋越しにリビンク・プレイルーム゙を見下ろす
 
□工事開始(10.10.16〜11.05)

 いよいよ工事開始。地鎮祭が行われ、建物の位置と高さを決める遣り方を出し、
お施主さんに現地確認をしてもらいました。


△地鎮祭

△遣り方
 
 
土工事(土の掘削)深さは凍結深度といって、冬でも零下にならない深さまで掘り、
捨コンを打ち、基礎の位置を決め配筋をしていきます。
 前面道路が傾斜しているので道路側の基礎は敷地内部の基礎よりも
40cm深い位置にあります。



△土工事(捨コン工事)

□原寸検査 (10.11.10)

 木材加工場にてM棟梁と、手板を見ながら建物の構造や
高さなどの打合せを行いました。
 今後、打合せを元に木材の加工が進められます。


△木材加工場にてM棟梁と打合せ

△図面と色模型                   △手板

△実際の高さを確認
□基礎RC工事 (10.11.14)

 基礎のコンクリート打設が終了しました。
コンクリートの養生期間を過ぎ型枠を取り外すと
木工事に進んでいきます。


△前面道路より                   △道路より公園へとつながる雁木通路部分

△玄関部分から公園の眺め            △車庫内物置とウッドデッキ部基礎


△公園の木の葉が落ち、周辺の山々が見れる△車庫部分基礎
□模型写真 (10.11.15)

 検討模型より開口部の整理や内部の家具や手摺の変更
に伴い、外部仕上げを貼った色模型を作りました。
この模型は、木材加工場でM棟梁との打合せにも使われました。


▲北側・前面道路側                ▲東バルコニー側

▲南側                        ▲西隣地側

▲内部2階                      ▲キッチンとバルコニー

▲プレイルームより塔屋へ続く階段     
□土台敷き (10.11.26)

 基礎RC型枠が外れ土台が敷かれました。
基礎工事のために掘られた土も埋め戻され、敷地と建物の
関係が見えてきました。


▲前面道路より敷地全景             

▲まっすぐ伸びた雁木通路の基礎        ▲公園と周辺の山々
□木工事 (10.12.09)

 木工事が始まりました。まっすぐ公園に伸びた雁木通路もトンネル状に
なり、2階床からの眺めも確認でき建物の雰囲気がでてきました。
 これから工事は木造軸組工事・屋根工事・外壁工事と進んで行きます。


▲前面道路より(建物全景) 

▲前面道路より雁木通路の様子          ▲雁木通路の中より公園の眺め

▲1F玄関ホールより公園への眺め        ▲2階リビングより前面道路側の眺め

▲2Fリビングよりプレイルーム側の眺め      ▲2階リビングより公園の眺め

▲個室1からの公園の眺め
□現場見学会(10.12.29)

物見塔が形になったところで、今日は年内最後のMさんとの現場見学会です。
今年もいよいよ残り3日となりましたので、M邸も外をシートで包まれ、中には
『お飾り』が飾られました。

▲物見塔が形になりました                ▲冬囲い養生で年越し体制に・・・

▲息子さんのゆうま君、内部探検中です     ▲天井が張られダイナミックな空間になりました

▲2階 天井中央に見えているのは物見塔部分の穴

▲新年を迎える準備が整いました

□上棟式(11.02.19)


年が明け、外部を塞ぐ工事が優先され、木製窓が取り付けられ、
カラ松の外壁材は、予め塗装してから張ることにしました。
外廻りが出来上がり、雪と寒さが凌げてからと、待って頂いた
上棟式を2月19日に行うことができました。
『西野は雪が多いなァー』と、余市のM棟梁に言われながらも、
事故もなくここまでたどりつけたのは、F工務店のチームワーク
の賜物です。
上棟式の前に、内部の仕上や、スイッチ・コンセントなどの
打合せをしました。骨格が表しになったダイナミックな内部空間の
片鱗が感じ取れるようになり、Mさん家族も嬉しそうにお祓い・
お清めをして、職人さん方に『御苦労さま、有難う』と喜びを
伝えてくれました。
神事なしの上棟式を済ませた後は、近所のお寿司屋さんで
直会(ナオライ)を設けて頂きました。15人で満席になるお店を
貸し切り、和やかな宴会となりました。工事中には、ナカナカ
気軽に声を掛けられない職人さん方ですが、美味しい料理と
お酒が気持ちを和らげ、今日ばかりは本音が飛び交い、
設計者としては、多少居心地の悪い話も出ますが、こちらも
同様に気持ちが和らぎ両方の耳が全開になっているので、
ニコニコと聞き流せます(笑)。
来週からは、気を引き締めてゴールに邁進することにします!


▲前面道路より                   ▲2Fから玄関を見下ろす


▲2Fプレイルームより物見塔を見上げる


▲内部仕上げ等打ち合わせ中・・・

▲息子さんのゆうま君がリーダーとなって、お払い・お清めの儀式を進めてくれました!
 
▲おいしい料理とお酒で話も弾みます♪

□上棟式〜(11.03.18)


待ちに待った上棟式を終えると、現場は急ピッチで進みます。
毎日毎日が映画のフィルムのコマ廻しのように変化していくのです。
この時期が、建築現場の醍醐味のような気がしますが、
設計者としては、刻々と変わってゆく現場を、手をこまねいて
いる訳にいきません。職人さん達からの質問・確認に対応する
のは勿論、設計通りになっているか?設計通りでいいのか?
設計より良くならないか?などと、出来上がる前に判断して
指示するのです。出来上がってから変えるのは、プロとしての
プライドが許しません(と言いながら、ダメな時は、理由を伝えながら、
お願いするしかありません。)
完成引渡・引越が決まるとカーテンブラインド・家具などの相談が
始まります。建主さんにとっても、この時期が最も目まぐるしく
感じるように思います。計画が始まった時の、緩やかな時間と
較べると一万倍以上の速さで時間が過ぎて行くように感じると
思いますが、そのユックリとした時間を共有していなければ、
このスピードについて行けないのではないかと思います。
『悠々として急げ』とは、開高健の名言です。ナカナカ、実行には
移せませんが、この時期に肝に銘じるのはいつもこの言葉です。



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