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雨竜O邸

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□はじまり


昨年の1月から相談にのっている、移住計画です。
今回は、京都から雨竜です。始めての敷地調査は、
猛吹雪で調査どころではありませんでしたが、
雪の多さは実感できました。遠距離設計(?)なので、
効率良い進め方が求められます。
とはいえ、効率良いだけの設計にはしたくありません。
『京都弁をマスターせんと、ええ設計にならへんかな?』
と心配しましたが、幸いにも、奥様は東京出身なので、
かつて馴らした東京弁を思い出しながら打合せを
進めることにします。


2010.01.23撮影  猛吹雪の中の敷地周辺


□敷地調査と打合せ (10.05.02)



まずは雪が解けてから、ということで、5月の連休を利用して
御夫婦で雨竜にいらして下さいました。
雨竜には、お嬢さん夫妻がお住まいなので、お宅をお借り
しての打合せができました。2年後に京都から移住したい
ので、来年中には建物を完成させ、ユックリと、時間をかけて
移りたい、という御希望でした。
《質素で快適な生活》をなるべく負荷を少なく出来る住宅を
希望されました。性能を上げることは勿論、太陽エネルギーや
風力・地熱などのお話をしました。雨竜の気候風土に適した
エネルギーとして、《地熱》が候補に挙がりました。
敷地は、まだ、雪が残っていましたが、さすがに地面は顔を
出していましたので、敷地調査をすることができました。
周囲の住宅は完成しているので、周辺環境の変化は
なさそうです。気になったのは、水はけですが、敷地の
南側に側溝があり、暗渠で放流出来そうです。
水位が高いのは地熱利用には良い筈です。

早速、検討することにしました。次回の打合せを9月に決めて、
それまでにタタキ台になるような計画を立てることにしました。


▲敷地前歩道                      ▲敷地全景

▲敷地南側の側溝


□基本計画(2010.9月)


敷地(地面と風景)を再確認し( 前回は猛吹雪 )、御夫婦の希望をお聞きしたので、
まず、与条件の整理から始めることにしました。

@敷地条件
 ・雨竜町の分譲地で、電気、上・下水道完備
 ・平坦地520u(約160坪)
 ・北入り道路(道路との間に町有地2.5M)
 ・粘土層:地耐力・水はけ良くない→対策必要
 ・積雪:160cm(札幌140cm、もっと多い印象→200cmで設計)
 ・気温:平均気温は5.9℃で8.5℃より低いが、内陸地域故、寒暖差は激しい。

A生活様式
 ・夫婦2人。来客は多くないが息子さん家族が訪問した時の受入れは必要。
 ・御主人は、音楽鑑賞と読書だが、閉籠ってではない。
 ・奥様は、趣味の陶芸のスペースが必要。
 ・共通の趣味として園芸があり、天気の良い日は外にいる方が多い。
 ・北海道らしい生活様式にしたい(せっかく京都から来るのだから…)。

B建物の要望
 ・風土に合った、落ち着いた住まい。
 ・落ち着きのある、明るい家にしたい。
 ・京都の家が、子育てを主眼にした家なので、今度は遊びのある家にしたい。
 ・バリアフリーは必要だが、病院の様な雰囲気にはしたくない。
 ・メンテナンスも含め、なるべくランニングコストを少なくしたい。
 ・環境に優しく、維持し易い、楽しい家にしたい。


以上の与条件を組合せながら計画案を3タイプ提案しました。

A案:田の字型プランに通り抜け通路と車庫・物置を併存する平屋案



B案:シンプルな大屋根を活かしながら南に開く一部2階案



C案:2階を生活の場にして、冬の閉塞感を緩和する総2階案





周辺の家と一緒に1/100の模型を作り、9月に打合せをしました。
A案模型

▲敷地上空より

▲南側庭より

▲北側前面道路より
B案模型

▲敷地上空より

▲南側庭より

▲北側前面道路より
C案模型

▲敷地上空より

▲南側庭より

▲北側前面道路より

□検討の結果


話し合った際の、各案のコメントを列記します。

@A案について
 ◎中心にLDKを配しているので、安定感がある→昔の日本の民家のよう
 ○おおらかな平面計画で、通り抜けの通路も魅力的
 ○水廻りがまとまっているので、家事の導線に優れている
 ○ゲストルームが普段は書斎として使えそうなので無駄が無い
 ×平屋なので、コストの心配あり
 ×中心の高窓が冬に雪で埋まって暗くなる懸念がある
 ×台所の明るさの問題
 ×通り抜けの屋根が冬季間、吹きだまりになるのが心配?


AB案について
 ◎全ての部屋が南に開いているので、明るく開放的
 ○庭との接点(テラス・デッキ・バルコニー)が魅力的
 ○屋根の形が北国的、かつ、日本的なのが印象的
 ○2階のゲストルームは、孫たちの長期滞在に適している(独立性)
 ○LDKがコンパクトにまとまり、アトリエと寝室の独立性に優れる
 ×洗濯室が独立しているので使いにくそう(臭いの問題?)
 ×洗面所が狭い


BC案について
 ◎2階の開放的な生活は魅力的(特に冬季間)
 ○陽あたりが良く、明るい家になりそう
 ○北欧デザインは魅力的
 ○総2階なので、コストも抑えられる
 ×1階の使い方がイメージできない
 ×防犯上の懸念あり(特に夜間)
 ×庭とのつながりが少ない
 ×将来の体力に自信が持てない(EV等の機械力に頼る不安)


話し合いの結果、B案で計画を進めることになりました。
これで、基本計画まで進みました。
遠距離設計(?)は順調に推移しています。


□打合せを重ねて(10.11.25)



前回の打合せの後、Oさんからお手紙を頂きました。
収納と水廻りのことが主体でしたが、その辺は1/50の
スケールで検討することにしましょう、と返事しましたが、
薪ストーブのリクエストが書かれていました。前回見学
したニセコのSさんとHさんの家の影響かと思いますが、
実際にお住まいになっている家を見せて頂く説得力は
代えがたいものがあります。

1/50の模型を見ながらの打合せは、それまでの《間取り》が、
《使い勝手》《雰囲気》《空間の繋がり》《ライフスタイル》に
視点を広げるような気がします。
洗濯室と脱衣室を一体にすることにより、念願の書庫が
確保できました。
もう一つの提案は、南の庭との一体感を強化することでした。
『二人とも、休みの日には外にいることが多いんですよ』
と言われたとおり、京都のお庭の写真を見ると、お二人の
思い出がぎっしりと詰まっているのです。テラス・ウッドデッキ・
バルコニーなどを充実させ、どこからでも庭と繋がれるような
提案をしました。深い軒先空間は、家の表情に変化と深みを
与えるだけでなく、永い冬の雪対策にも繋がると思います。

今回は、見積に影響する機器類の打合せも大事な項目
でしたので、一緒にショールームに行き、ユニットバスや
キッチンなどを見て廻りました。
案内してくれたスタッフの説明に、
『前の家の時は、こんな説明はありませんでしたよ!こんなに
たくさんの中から一つに決めるなんて出来るのかしら・・・・・?』
と、最初のうちは戸惑っていましたが、後半になると、
『ヘェー、説明を聞いているうちに、必要なものと、不必要なもの
が見えてくるようですね!?』
と、学習効果を感じられたようでした。


打合せもハードになってきましたが、もうしばらくの辛抱、
お願いします!!!


1/50模型

▲内部                         ▲アトリエ側より見た内部

▲玄関の正面に見える螺旋階段         ▲北側前面道路より

▲南側庭より  南側に面するどの部屋からも庭に出ることが出来る


□実施設計スタート!(11.01.18)



昨年の11月の打合せ以降、実施計画の作業に進み、
年明けの打合せに向けて実施図面を作成し、
色付きの模型の製作を始めました。
前回の打合せ後変更した水廻りと
収納の細かい使い方などを復習しました。
独立していたウッドデッキとテラスを一体化し、
外部との繋がりをより密接にすることを提案しました。
外壁の色に関して、雨竜に住んでいる娘さんから、
「白い壁は蛾が寄ってくるわよ」というアドバイスがあったので、
防腐注入木材:ハイローブウッドの墨色に合う色を選び、
塗り壁のサンプルをつくって、模型を製作して見てもらいました。
このアドバイスのお蔭で、小田さんらしい
落ち着いた雰囲気の色合いになりました!

ハイローブウッド(下)と土色の塗り壁サンプル

大筋で認めて頂き、見積の方法をお話し、
今回は2社に依頼することにしました。
1月中に図面修正して見積依頼し、
2月中に見積調整、3月中旬には業者決定、
3月22日に業者と契約などの話が出来るようにする・・・
というスケジュールを確認しました。
いよいよ、計画が具体的な数字になる時が来ました。
計画が始まってから、ちょうど1年です。
いつものことですが、気分が高揚します!


1/50色付き模型

▲北側前面道路より                 

▲南側庭より 

▲南側庭 バルコニー                ▲内部                      

▲アトリエとセカンドリビング             ▲螺旋階段と2階セカンドリビング


□見積UP〜業者の決定!(11.03.31)


前回の打合せを実施図面に反映させる作業を1月中に終了させ、
2月中旬に、予定通り2社に見積を依頼しました。
A社はアルクムと18年来の付き合いのある旭川の建設会社で、
奈井江や雨竜の住宅も手掛けている実績があります。
そしてB社はOさんの娘さんの雨竜の家を施工してくれた
札幌の建設会社です。

同じ図面、同じ条件で見積をして貰うのですが、
同じ金額で提出されたタメシがありません。
もっとも、そうであれば、合見積りの必要も、効用も無いのですが、
この辺に、建設業の価格に対する
不信感の根源があるような気もします。
かといって、公共建築のように予定金額を設定し、
その金額に一番近い施工会社に発注する、
という制度も、必ずしも公正とは限らないのは実証済みです。


話が脇道にそれましたが、
2週間で各社が渾身(?)の見積を提出してくれました。
内容をチェックする前に、まず、
大まかな金額をOさんに報告しました。
やはり、金額の差はありましたが、
公共工事と違い、金額だけで決めるのではなく、
それぞれの会社の、図面の読み取り方、積算の正確さ、
単価の適正さ、今回の工事に対する会社としての取り組み方、
などを発注者の立場で、見積書から読み取ることも、
見積チェックの大切な項目です。
見積チェックの作業が進み、
変更も含めた提案に対して再見積をお願いし、
どうにか、業者の候補と目標金額の目途が立ち、
Oさんに報告しました。

《東日本大震災》が起こったのは、その直後でした。
Oさんにも、アルクム関係にも、直接的な被害が無かったのは、
不幸中の幸いでしたが、これからの計画の進め方について、
話し合う必要性を感じ、作業を一時中断し、
大震災がこの計画に与える影響の情報を
収集することにしました。

@近時的には流通の影響が一番大きいだろう
A中期的には生産体制の復旧と資材不足が問題になりそうだ
B長期的には復興(仮設住宅建設以降)による値上げと増税が考えられる

というのが、集まった情報を分析して出た、
取り敢えずの推論でした。
その推論をOさんに伝え、
今回の計画の進め方を検討した結果、
進めるのであれば、時間と金額と計画は、
いつも以上に緊密に把握し、
状況の変化に対して、的確な判断と対応が
出来るチームワークが必要になる、
という結論に達しました。
そして、なるべく早急にチームを組むことが、
スケジュールを立てるにも、資材を発注するにも、
人材を確保するにも、経済的にも有利になりそうだ、
ということを確認しました。
それから、契約の優先候補であるB社に声をかけ、
Oさんとの遣り取りの経緯を話し、
震災後(見積は震災前)の協力を打診したところ、
『不安材料はありますが、協力します』
という率直な返事がありました。

2か月前に決まっていた日程通り、
3月22日にOさんとB社のS社長、
地熱利用会社のH氏がアルクムに集まり、
大震災の影響に対する《心構え》を確認し、
それぞれの考えを話し合いました。
普通であればお互いに、『よろしく』という、
和やかでお目出度い顔合わせの場になるのですが、
今回は、戦に向かう前の《結団式》のような
雰囲気に包まれていました。
それでも、契約までのプロセスや、
事務的な確認事項を取り交わす頃には、
お互いに対する信頼感も芽生えて来たように感じることができ、
ホッとしました。
こんな経験は初めてのことで疲れましたが、
私にとっては心地よい緊張感だったような気がしました。

次の日は、OさんとS社長と今回の棟梁を任されるO氏を伴い、
規模・工法・使用材料など、今回の計画と
共通点の多い南郷のNさんの家を見に行きました。
Oさんには、昨年、ニセコの住宅を見て貰う機会をつくりましたが、
あのときはまだ、Oさんの計画が形になりかけ(基本設計中)
のときでしたので、きっと、実感が湧かなかったと思いますが、
今回は、模型や図面を参照しながら、
実物(Oさんの家ではありませんが・・・)実寸の説明が出来るので、
ずいぶん身近に感じることが出来たのではないでしょうか?
施行会社(特に棟梁)に見て貰うのも、
初めての業者にお願いする時には、必ずやるようにしています。
昨年の長万部の計画の時も、
施行業者にニセコの建物を見て貰いました。

《雨竜O計画》の乗組員が揃い、さあ、出航(タビダチ)です!
錨をあげて、帆をひるがえし、進路は海原にむかうのです!!!


□地鎮祭(11.05.25)


前日まで雨が続き心配しましたが、
札幌を出発する時には曇っていた天気も、
高速を北上するに従い雲が薄くなり、
雨竜に着く頃には青空が見えてきました。
現場ではテントを設営しているところでした。
白いテントは一人で組み立てられる優れモノです。
が、祭壇はヤッパリ、昔ながらの木製でした。
こんなところにも、新旧の移り変わりが見られます。





モダンな白いテントの下で行われた地鎮祭は、
雨竜の爽やかな天気とマッチしていました。





同じ区画で2軒の工事が始まっていました。



アルクムの工事より素早く出来上がって、
後ろめたい気持ちになるような気がします。
まあ、『歩く・無計画・工房』ですから、
慌てず、ユックリと造っていこうと思います。


□上棟式(11.07.02)



地鎮祭に続き、上棟式も見事に晴れ渡りました。
澄み切った青空に、木材が幾何学模様を切り取っています。
高所での作業に、緊張感がみなぎり、
木材が組み立てられていきます。




プレカットには出来ない綺麗な仕口が、
安全と安心を保障しているようです。
神事なしの上棟式ですが、京都の神社さんで頂いた棟札と模型を供え、
参列者全員で、工事の安全と、建物の完成を祈祷しました。




式の後、現場で少し打合せをしてから、
近くにお住まいの娘さんの住まいに移動し、
直会(ナオライ)として、
お決まりの焼き肉パーティーで、
大工さんを慰労してくれました。




普段、無口(?)な大工さんたちも、
美味しい食べ物と、美味しいビールで、
現場とは違った、和やかな雰囲気でした。
普段は予備のカーポートですが、ヨシズを使って、
気持ちのいい空間が出来上がっています。



工事はまだ半ばですが、キット、この雰囲気のような、
心地よい空気を包み込む家が出来る予感がします。



□現場進捗状況(上棟式〜)

時間の経過とともに、工事は進んでいます。
上棟式以降の現場の進捗状況をお伝えします。

□11.07.12

骨組みだけだった上棟式から工事は進み、
屋根に断熱材が敷かれ、煙突が姿を現しました!
外壁の合板を張る作業が進められています。


▲北側前面道路より                 ▲南側中庭より

▲南側中庭より

▲2階セカンドリビング

□11.07.26

外壁に断熱材が張られました。
O邸は、地熱エネルギーを効率よく利用するため、
断熱性能を高めた設計をしています。(断熱性能を示すQ値は1.3以下)
外壁には、柱間にグラスウール100mmと、更にその外側には
75mm、屋根には150mmのスタイロフォーム板を張り、
魔法瓶のように家を包みます。
屋根の仕上げ材も敷かれ始めて、段々と建物の表情が見えてきました。


▲北側前面道路より                 ▲南側中庭より

▲南側中庭より                   ▲屋根の仕上げ材 表面の砂粒に雪が引っかかり、
                              勾配屋根でも無落雪の屋根となる


                ▲2階セカンドリビング テラスの方を見る

□11.08.09

連日30度を超える暑さの中、頑張ってくれている現場の職人さんのおかげで
O邸はどんどん完成に近づいています!
外廻りの断熱工事は終了し、いよいよ外壁の仕上げ材を張る準備が整いました。


▲北側前面道路より                 ▲南側中庭より

▲南側中庭より                ▲1階アトリエ前のテラス

▲玄関アプローチ         ▲2階セカンドリビングより1階アトリエを見る

□11.08.23

外壁の腰部分に、仕上げ材であるスギ板が張られました!
塗装してあるように見えますが、これは、防腐のため
食用油を加圧注入することで変化した色で、
落ち着いた雰囲気をつくりだしてくれます。
「室内は明るい雰囲気に」というOさんの要望で、
白く塗装した天井と、白木のままの梁が明るく美しい表情に仕上がっています。


▲北側前面道路より                 ▲南側中庭より

▲南側中庭より                    ▲北側2階和室の窓
    
▲1階アトリエ前より2階を見上げる   ▲玄関より

□11.09.06

外壁は、あとは塗り壁材を塗って完成!というところまで
進んでいます。
内部は、壁にグラスウールが敷き詰められて、いよいよ
完成まで、ラストスパートです!


▲北側前面道路より                 ▲南側中庭より

▲南側中庭より

▲ポーチ天井           ▲1階アトリエ前より2階を見上げ

□11.09.27

外壁の塗壁が仕上がりました!
蛾対策も考慮して選んだ色は、腰板の墨色と調和して
落ち着いた雰囲気に仕上がりました。


▲アトリエ前のテラス                ▲南側中庭より

▲南側中庭より

▲ポーチ

□11.10.02

外装工事が完了し、足場が解体されました。
すっかり秋色になった景色に、大きな三角屋根と落ち着いた色合いが
よく似合います。
今日は敷地の土の入れ替え工事が行われました。
内部は壁の下地材が張られ、暖炉の周りに積むレンガも搬入されました。


▲南側中庭より

▲庭土の入れ替え工事              ▲暖炉の周りに並べるレンガ


□11.10.05

京都からOさんが来道してくださり、完成に向けての最終打合せを
行いました。次にお会いするのは完成後の引渡し時です。
家具や色、外構に関して細かな打合せを進めました。

□11.10.21

10月最後の現場打合せです。
内部では家具工事が進められ、キッチンも取り付けられました。


▲家具製作中

▲キッチン設置
▲アトリエ前につくられた大工さん用休憩スペース。なんだか良い雰囲気です♪


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