2005.9月の先週のハイライト

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05.09.12

少し遅れましたが、先週分の《先週のハイライト》をお送りします。
実は、先週の木曜日の午後から、遅まきの夏休みをとりました。

『住宅建築』の30周年記念のパーティーが、東京の新宿でありました。
北海道の住宅を、全国に紹介してくれた平良さんが主宰していた雑誌です。
個人的にもお世話になったし、久しぶりで会える人もいるかな?と思い、参加しました。
思っていた以上に、若い人が多く、戸惑いましたが、
こっちが年をとってしまっただけかも知れません。
いま、《住宅》は若い人のものなのでしょう。

それでも、目を凝らすと、懐かしい人が何人かいました。
スペイン・ポルトガルとメキシコを一緒に旅した小野正弘さんが見えていました。
『今年はアメリカにカーンを見に行きました。今度はバングラディッシュのカーンを見に行きたいと思っていますが、染谷さんは、次は、どこに行きたいですか?また、一緒に行きましょう』 70過ぎても、まだまだ、バリバリの現役です。  見習いたいものです。

そんな関心をしていると、東京と高崎で活躍している徳井正樹さんがいました。
今、澄川で工事している住宅は、最初、徳井さんに相談に行ったことを、住み手のOさんから聞いていたのです。
←写真中央が徳井さん
その後の経緯を、徳井さんに話すと、『いやー、よかった。実は、気になっていたんですよ。
札幌の仕事は、ナカナカ難しいです、と言ったのに、3回も会いに来てくれました。
その後、どうなったのか、心配していたんですが、ほんとに、良かった。
実現に向かって、進んでいるんですね。あの熱意があれば、きっと、いい家が出来ることでしょう。
出来たら、きっと見に行きますから・・・』と、ほんとうに喜んでくれました。

あっ、おかっぱ頭の泉幸甫さんが来ていました。
以前から、目白の『アパートメント 鶉(じゅん)』を見せてください、とお願いしていたので、場所を教えてもらい、早速、次の日に見学に行くことにしました。

次の日は、近所の散歩のあと、一人住まいになった母親と昼食を取ってから出掛けました。
最近は、東京に帰ると、近所の古い建物を見て廻ることが多くなってきました。(歳ですね)

JR目白駅から学習院に沿って、5分ほど歩いて目白通りから、一本はいった小路に面して、
目指す『アパートメント 鶉』がありました。
 

 
周りの家並みに合わせ、軒の高さを抑えた2階の建物で囲われた『中庭』を共有する、13世帯+ギャラリーの集合住宅ですが、ここだけが、時間が止まった《宮崎駿》の世界のようです。この中庭から、新宿の高層ビルが見えるのが、なんともいえず、シュールでした。
こんなところに、というより、こんなところだから、《ビオトープ》なのかも知れません。

蘭越の池田さんのところで、ここを見習い、《ビオトープ(自然再生)》しようとしたのが、
今思えば、的外れのような気がしました。
それにしても、ここに流れる、ゆったりとした時間は、何という贅沢でしょう。

そのあとは、東京にいる次男坊に会い、池袋で食事をしました。
10日前に20歳になったお祝いもかねて、親子の祝杯をあげようと張りきっていたのですが、
『酒はあまり好きじゃない』と、クールに言い放ち、ピーチハイ1パイ。
あとは、焼肉を腹一パイ食べて終わりでした。   残念!!!

次の日は、せっかくの夏休みなので、愛知万博でもと、名古屋まで、足を伸ばしました。
万博を見る前に、名古屋の友人にあって、前情報を入手してから、と思い、
その日は、豊田市に戻り、『豊田市美術館』を見ることにしました。

ニューヨーク近代美術館の増築工事が発表され、《世界の安藤》に続く建築家として、
ワールドデビューした《世界の谷口》の10年前の作品です。
以前から気になっていましたが、去年の春に志摩の《海の博物館》を見に行ったときに、
あまりの遠さに、見に行くのを諦めた作品です。

タクシーを降りて、いつも通りの、素っ気ないけど美しい『豊田市美術館』というサインを確認してから、ゆっくりと、建物に近づきます。
  
 石・ステンレス・コンクリート・ガラスだけで構成された端正なプロポーションの建築が、
ピーター ウォーカーの造園と共鳴し、背筋の伸びる、でも心地よい空気が感じられます。
順路も何もありませんが、自然に建物に向かい、エントランスコートに引き込まれます。
近づくにつれ、少しづつ、建物の全貌が見えてくる仕掛けになって、期待を増幅します。
伸びやかな空間から、一挙に天井高2.2m程の極端に低いエントランスに引き込み、
すぐに、重力感・素材感を消し去った、真っ白な、美術品のための空間にすり替えます。
その手際のよさは、まるで、最上級のマジックに掛かったような爽快さを感じます。
  

 
ここでも、アートと建築がコラボレイトしながら、新しい環境を提示していました。
心はすでに、『建築少年』になって、素材の使い分け・空間の構成・あかりの演出、etc.…。

我を忘れて、駆けずり回り、疲れ果て、ふと、敷地内にある茶席に入りました。

自然に囲まれた軒の深い端正な建物に見とれていると、うしろから妙齢のご婦人に
『お茶、召し上がりませんか?』と、声を掛けられ、『それでは』と中に入りました。
札幌から来た建築をやっているものです、というと、
『それは残念です。今度の木曜日に、谷口先生が、ビルバオの美術館を設計した方と一緒にお見えになりますのに・・・』『フランク ゲーリーですか?』『そうです』と、自然に建築の話になり、この茶席は、谷口さんの始めての茶席で、大好きな栗を使ってあり、
立礼席の照明は、お父さんの吉郎の《写し(コピー)》ということも教わりました。
  
心のこもったお茶は、疲れた体にしみわたり、しばし、夏の暑さも忘れました。
『槙先生のトヨタの記念館は、御覧になりました?初期の作品ですけど、肌理(きめ)細やかな配慮がされていて、いい建物ですよ、ぜひ御覧になって行ってください』

ということで、今度は、谷口さんの慶応とハーバードの先輩に当る槙文彦の設計した、
鞍ヶ池にあるトヨタ記念館に行くことになりました。
ほんとうに、行き当たりバッタリの旅になってきました。
それにしても、どんな方かは存じませんが、建築の造詣の深さは、並大抵ではありません。
関西文化の奥深さに、舌を巻かれる思いでした。

さて、だいぶ疲れたので、この続きは、『また、あしたの心』ということにさせて下さい。


05.09.20.

さて、忘れないうちに続きをお伝えします。

前回は、豊田市美術館に行って、槇 文彦の《トヨタ鞍ヶ池記念館》を勧められ、
女性の誘惑に弱い私は、すぐに、その気になってしまったところまでで、終わりました。
駅に戻り、時刻表を見ると、なんと、1時間に1本しかありません。
あきらめて、きしめんでも食べようとしましたが、見当たりません。
またあきらめて、駅下の喫茶店で、ビールとソースヤキソバで時間をつぶしました。
これがまた、『うまいの、なんの!』の《山本益博》状態でした。
考えてみたら、朝から2時過ぎまで、何も食べていないことに気がつきました。
やっと来たバスに20分ほど揺られ、鞍ヶ池に着きました。 それは大きな公園でした。
こっちかなー、と歩いていくと、これもまたみえにくい、《上品》な看板が出ています。
慶応出身の建築家(じつは、慶応大学には建築は無いのですが…)は、『サインが見にくい』
という伝統があることを発見しました。
  
アプローチも、やっぱり、建物をチラッと見せて、ナナメから近づくのも同じです。
これは、日本古来の伝統でもあり、古いお寺さんも、よく使う手ではありますが・・・・・。
なにしろ、30年前の建物ですので、かなり、老朽化しているのではと、心配でしたが、
打放しコンクリートも、くすんではいますが、一緒に使われている大理石と区別がつかないほど、綺麗な状態で、施工の良さもあるのでしょうが、手入れの良さの賜物でしょう。
受付で用件を伝えて、写真の撮影の許可を取り、入館料を払おうとすると、
『無料でございます。ごゆっくり御覧下さい』さすが、世界のトヨタ自動車、太っ腹です。
雑誌で見た写真を思い出しながら、ユックリと見せて頂きました。
それにしても、30年前に見たことを、ハッキリ憶えているのに、
探し物をしているうちに、なにを捜しているか忘れてしまうのは、どうしたことだろう。
『ヘェー、槇さんも、けっこう、ポップだったんだー』と、再発見。
30歳違い、ということは、今の私と同い年ということか・・・・・。
  
閑話休題 
そんな思いに浸りながら、アプローチの坂を下ってバス停に戻ると、バスが来ました。
ちょうど、1時間のタイムスリップでした。
気が付くと、すでに4時過ぎです。
友人との待ち合わせは6時頃、の約束でした。
土地勘が無いので、すこし慌てて、名古屋市内に向かいました。
友人と、彼の友人の建築家と、ホテルで落合い、一緒に食事を取りました。
友人とは3年ぶりでしたが、一緒にモロッコとポルトガルを旅した思い出になると、あっと言う間に、時間がもどり、学生だったお嬢さんが、大学院に入ったことを聞いて、
時間の経過に、お互いがビックリしました。
初めて会う彼の友人も、同じ建築仲間で、たまたま、3人共,丑年ということもあり、
話は途切れることも無く、本当に楽しい時間が過ごせました。

話の中で、お二人が問わず語りにした、『赤だし談義』は、東京出身の私には、
ほんとうに、羨ましく感じられました。
『やっぱ、味噌は赤だしだよなー』
『ウン』(この『ウン』がまた、シミジミとしているのです)
『他の味噌では、あのコクは、出せんもんねー。特にワカメとトーフの味噌汁は・・・』
『ウン』
ただそれだけの会話ですが、郷土愛というのを、あれ程強く感じたのは、初めてでした。
旅の疲れも忘れ、夜のふけるのも忘れ、気持ちよく、飲み語りました。
この時間が、今回の《旅》の最大の目的だったのかもしれません。
突然の珍客に付き合ってくれた、Fさん・Dさん、ほんとうにお世話になりました。
こんどは、札幌でお会いしましょう。

さて、翌朝、勇んで《リニモ》に乗って、万博会場に駆けつけました。
朝刊では、昨日の万博の入場者が、最高の25万人を記録した、と報道していました。
会場に着くと、すでにゲートは長蛇の列が出来ていました。
気温も連日30度を超え、只ならぬ熱気が漂っていました。
デジカメの電池が切れそうだったので、会場内で販売しているかどうか尋ねると、
『ワカリマセン!』 の一言。
 
ボーッ、として《リニモ》の路線図を見ると、『芸大通り前』に目が留まりました。
芸大といえば、愛知芸大に違いありません。
愛知芸大といえば、吉村順三の設計で、木曾工作所の奥村さんの作です。
『やっぱり、万博より、建築にしよう!』
と後を振り返らず、《リニモ》に乗り、後戻りしてしまいました。

駅から20分ほど歩き、公園のようなキャンパスを歩いていると、
樹々の間から、見慣れた(モチロン初めて訪れたのですが)建物が見えてきました。
『来てよかった』と、ホッとした気持ちになりました。
あいにく夏休みで建物の中には入れませんでしたが、緩やかな丘陵を生かした配置計画は、
さすがに、自然を愛している奥村さんの力量を感じました。
  
もう15年ほど前、札幌に講演会で見えたときに、私の設計したニセコのログハウスに泊まり、一緒にスキーを滑りながら、
『あの枝ぶりは、すこし変だな。きっと、あの隣に違う樹が生えていたんだろう』
『この斜面のコブは、人工的につくったようだ』
と、つねに周りの環境に反応している先生の姿を、懐かしく思い出しました。
建物が、樹々と一緒に、同じ空気を吸い、同じ風を受け、同じ光を浴びているようです。

30年の月日(トヨタ記念館と同じです)も味方につけ、好い歳をとっています。
よく見ると、奥村さん一流のウィットが、そこかしこに、まぶされています。
Vデッキを使ったパイプシャフト・花壇のような雨受け等を見ると、ニヤッとします。
 
すがすがしい気持ちで名古屋市内に戻り、昨日勧められた《味噌カツ》を食べました。
モチロン、味噌のコクがスッキリとする、と言われた《ネギ味噌カツ》にしました。


そのあと、市内をブラブラしてから、すこし早めに『中部国際空港』に行きました。
この空港は、高校の同期で、1年早く早稲田に入ったH君が現場の監督した空港です。
業界では、トコトン、コストを抑えた空港として有名なので、H君の苦労が偲ばれます。
 
早く来た、もう一つの目的は、空港内にある温泉が目当てでした。
《飛行機を見ながら、湯に浸かる》   ナントモハヤ、すごい発想です。
ミスマッチも、ここまで来ると、立派です。
湯から上がって、《生ビールにエビフライ》の最強コンビ。
生きてて良かった、と思える瞬間です。
ヤッパリ名古屋は、エビフライに限ります。

最終便で、4日ぶりで札幌に帰ってきました。
ちなみに、4日間で歩いた合計は71947歩でした(携帯に歩数計が付いています)
平均 18000歩/日 でした。



★05.09.17.の富良野、東神楽レポート(河村)

9/10(土)にアルクム全員でファーム富田と東神楽N邸の現場に行ってきました。

前日の夜まで、東神楽N邸の1/50の色付き模型を桶谷君が頑張っていました。色付き模型は、作業に時間がかかる分、建て主になる方に見てもらうときの笑顔を想像してつくります。

現場打合せでは、まず事前にその日何を打合せするのか?決めなければいけない事項など、準備をします。そして現場では、進行状況(工程監理)・状態のチェックと、進み具合にそって、床高の確認や造り付家具等の使い方など、現場のスケールで打合せし、こちらからの提案、建て主の考え・意見、施工側の意見を統合して、どういう計画におさめるのか。そこから、次回までの宿題や新しい提案に向かいます。

午前はファーム富田の打合せ。所長がプランの打合せをしている間に、対象建物を含め周辺の通路や樹木の位置や、畑までの距離などの測量をおこないました。打合せには、ラフプランと1/100模型は作成しましたが、それをたたき台にしてより具体的な計画へと進めます。

午後は東神楽の現場打合せ。進行状況は基礎までの工事が終了し、大工さんは、土場(工場)で材料のけがき(墨付け)をしているところ。現場では、敷地内の地下水のポンプと池の工事の確認を行いました。基礎の上に実際に立って、部屋の大きさや、窓の高さを持って行った模型と参照しながら、確認しました。現場で確認すると、この窓から何が見えるか、また、何が見られるかが、同時に判ります。その後、施工会社のK田組に行き、今回Nさん夫婦が自分たちで塗る床や柱梁材に、塗装屋さんのレクチャーを受け、実際に色を塗りながら、塗壁や古材との相性を見ながら、色決めをしました。
古材の仕上げの程度や使う向き・部位を、ホゾ・傷・ソリ等を確認しながら決定します。これでやっと、棟梁が、思う存分、腕を振るうことが出来るのです。
  

★05.09.17.の富良野、東神楽レポート(桶谷)
この日はアルクム全員で富良野、東神楽へ行くこととなりました。富良野では打合せと、メジャーを使い測量をしました。僕は河村さんに指示を受けながらテキパキと寸法をはかりました。この測量をきちんとしないと後々困ることになるので、正確に図面にプロットした数字を図面化できるのか、そんなことを考えながらやると、どこを図ればいいのか、どこを基点に考えたらいいのか、だんだんわかってきます。(僕はまだまだで河村さんの指示を受けてばかりですが…)今後このような機会があったら、もっと自分で出来るようにしなければ、そんなことを考えながらの作業でした。

そのあと、東神楽へ向かい、現場にてNさんとの打合せでした。その後は施工会社にて打合せ。現場では、立ち上がった基礎や現場の状況を確認しながら現場でしか出来ない打ち合わせ、事務所では古材などを見ながら事務所でしか出来ない打合せ、色々なところを決める事に、適した場所というものがあるのです。いつかはそんなことが自分一人で出来るように日々精進です。

PS:今回の打合せでは、僕が作った色つきの模型を持っていきました。Nさんにとても喜んでもらい、打合せにも役に立ったので一安心でした。
 


05.09.22.(桶谷レポート)

9月15日(木)に、先週、先々週のハイライトでUPした、所長の旅行をみんなで見る機会を作ろうと、事務所でスライド会を行いました。


泉 幸甫の『アパートメント鶉』は、アパートですが1つ1つの住居が別々の顔を持っていてまるで1つの村を思わせるような建築の素晴らしさ、谷口 吉生の『豊田市美術館』では重力を感じさせない建築、槇 文彦の『トヨタ記念館』では何年たっても変わらず衰えない建築、勉強するべき事が沢山ありました。色々な人の色々な建築をみんなで見ることはとても勉強になります。僕もまだまだ、知らない建築は多いのですが、身近にある、自分がかっこいいと思う建築は、なるべく見るようにしています。まだまだ、有名な建築でも僕が知らない建築は数多くあるので、もっともっと見て、目を養っていこうと思います。

  
↑アパートメント鶉       ↑豊田市美術館       ↑トヨタ記念館

話しが前后してしまいましたが、今回集まったのは旧スタッフや家具関係・木材関係の方々、総勢10名でした。平日という事で、みんなお疲れの様子でしたが、パン・お惣菜・ビールを片手にみんなとてもくつろぎ、癒されたようです。また、このような癒しの機会?を作りたいと思います。


05.09.30

18日の日曜日は、敬老の日に、奥さんの義父さん(義母さんは用事があり)と家族5人で、
モエレ公園に行きました。ほんとうは、愛犬・菊次丸を連れて行きたかったのですが、
まだ、予防接種が終わっていないので、公園デビューができないのです。
それでも、雨の予報が、何とか雨にも降られず、気持ちのいい時間が過ごせました。
  
メインは、『ラン・ファン・キ・レーブ』でのランチです。
昨年の『マッカリーナ』の豪華な料理と比べてみるのが、楽しみでした。
ウェイティングルームに通され、シンプルなハーブガーデンを見て、ハヤル心を静めます。
まずは、前菜の盛付けに、一同『オーッ』と、歓声が上がりました。
  
公園の爽やかさを感じさせる、楽しい盛付けです。
味付けも、『マッカリーナ』よりも、サッパリしているようです。
次々に運ばれる料理に、時の経つのも忘れてしまいます。

気が付いたら、なんと、2時間も経っていました。

身も心も満足して、外に出ると、公園の風が、爽やかに頬を撫ぜてくれました。
残念だったのは、食事の時間に、噴水のショウタイムが終わってしまったことです。
前回は雨天中止で見られず、今回も見ることは出来ませんでしたが、次回に期待します。

腹ごなしに散歩しましたが、85歳になる義父さんが、『あの山に登ってみよう』と、
歩き始めたので、みんなもつられて、歩き出しました。
 
10年前に、父と一緒にアンコールワットを見に行ったときのことを思い出しました。
80歳になってから、どうしても行きたいと言い張り、兄と3人で行きました。
手を這うような急な階段を登り、『お若いですね』と言われるのを自慢げに聞いていました。
少し汗ばんだ肌に、頂上の風が心地よく吹き抜けました。
『ウシに惹かれて善光寺参り』ではありませんが、『チチに曳かれてモエレ山登り』でした。
 


次の25日の日曜日は、東神楽のNさんと施工しているK組の工事監督・棟梁と一緒に、
蘭越のIさんの家を訪問しました。
上棟の前に、Iさんの家の柔らかな雰囲気と仕上がりの程度を、Nさんと一緒に、
監督と棟梁に見てもらうのが、今回の目的です。
『ラフに納めてください』とお願いしても、言葉どおりだと、『雑にして』になってしまい、
棟梁も、黙っていると《キチット納めてしまう》のが判っていたので、見に来ました。

ほんとうは、8月の末に見に来ようと思ったのですが、Iさんに電話したら、
『丁度その頃、赤ちゃんが生まれる予定なので・・・・・』
という喜ばしい《ビッグ・ニュース》のため、延期になっていたのですが、
8月20日に、なんと自宅で、女の子を無事出産しました。
『母子ともに元気なので、1月経ったら、どうぞ』
という、有難いお誘いに、6人の団体で、押し掛けてしまいました。

30分くらいのつもりが、棟梁の熱心な調査・観察で、1時間半に延びてしまいました。
登り梁の納まりを見ながら、『ウーン、こういうやり方もあるのか、始めて見たな』

天の間のスノコを見ながら、『こうやればスッキリ納まるな』

手摺を見ながら、『これはキット、後から建具を入れられるように、こうしたんだナ』

と、ひとりで、Iさんの家の棟梁と、腕の立つ職人同士の、架空の対話をしていました。

産後のIさんに無理を言ったり、旭川からワザワザ来てもらったり、
設計事務所のワガママなお願いを聞いてくれて、ほんとうに有難いことです。
言葉でも、図面でも伝えられないことを、どうしても伝えておきたかったのです。
やっぱり、アルクムは『ワガママな設計事務所』ですね・・・・・。

八月の満月に生まれた《葉月ちゃん》を紹介します。


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