2004.11月の先週のハイライト


04.11.18.

先週は、この欄をさぼってしまいましたが、
その分、河村君が現場の情報をこまめに伝えてくれたようです。
札幌も、2度目の雪で白くなりかけましたが、まだ、ダメです。

H学園の工事は、なんとか今年度の工事は目途がつきましたが、
あと2つの工事は、雪と追い掛けごっこで進んでいます。
良い天気が、1日でも多く続くことを、祈るばかりです。


さて、先週のハイライトですが、11〜14日まで、大通りの
地下街のオーロラタウンで「きらりとひかる住宅」展という、
写真展が開かれ、アルクムの作品も、2点出品されました。

この展覧会は、設計監理協会という、設計事務所の集まりが、
(私の所属している建築家協会は、建築家個人の集まりですが)
毎年、会員の足で集めた「きらりとひかる住宅」を選び、
展示して、一般の方にアンケートをしてもらい、それをふまえて、
優秀賞を3点選ぶコンクールです。

アルクムも2年前、中ノ沢の家が選ばれて、アンケートでは、
かなりポイントが高ったにもかかわらず、選考委員長が、
『この建物は、古材を使い、非常にコストも掛かっていて、
一般的ではないのでは・・・』という、有り難い評価を頂き、
(本当は古材も使っておらず、コストも一般的なはずなのですが)
『それでは、今回は若い建築家の方たちに・・・』という、
何だか、よく判らない選考で、受賞を逃した経緯もあり、
今回は、かっこよく、お断りをしようとも思いましたが、
大人げない、という気持ちと、選ばれた2点がふたつとも、
20年以上前の、アルクムの創世記の作品で、しかもふたつとも、
施主が1級建築士の資格を持っていた事もあり、共同で設計した、
思い出深い作品だったので、断わりきれませんでした。
(余談ですが、自邸を除いても、一級建築士の家を7軒も設計しています。
どういう訳かは定かではありませんが、自慢のひとつです)

上写真2枚「きらりと光る北の建築展」出展建物

話を戻しますが、2軒とも、その後のリニューアルの相談も受け、
きちんとメンテナンスをしているからこそ、選ばれたと思います。
設計も大事ですが、そのあとの、維持管理が「きらりとひかる」
秘訣だということを、たくさんの人に見てもらいたかったのです。


04.11.01.

先週は週末を利用して、東京に行ってきました。
3年ぶりの高校の同期会でした。
もともと、5年毎の開催だったのですが、60歳を前にして、
5年も待てなくなり、3年毎にしたのだそうです。
やっぱり、歳をとると気が短くなるのは、私だけでは無いようです。
それでも集まると、みんな高校生に戻ってしまい、
髪の有無・白黒に関係無く、『あの時おまえはこうだった』
『おれはおまえに、こうしたのに・・・』と、帰らぬ青春を懐かしみました。
前回頃から、女性の参加が目立ってきたのは、子離れ現象でしょうか?
なぜか、2年後(?)の再会を約束して、2次会、3次会に流れました。

せっかくの上京なので、原宿のブランド通りで建築視察をしてきました。
3年ぶりの表参道は、世界のブランドブティックが軒を連ねていました。

まずは、《Dior》(設計:妹島和代+西澤立衛)が、不思議な佇まいで、
目に飛び込んできました。
その、陽炎のように《はかない》表現が、情報過多の原宿では、
逆に、確固とした存在感を主張しているように、感じました。
建物を消す事により、歩いている人が主役に見える効果と、
歩くことにより刻々と変化する表情が、表参道という場所を、
適確に捉えていることがわかります。
そのコンセプトを表現するために、何十というアクリルサンプルを作り、
ひとつの材料に絞り込む《エネルギーとコダワリ》は、
さすがに、伊東豊雄の一番弟子の面目躍如といったところです。


 

お次はブランドの王様《LOUIS VUITTON》(設計:青木 淳)です。
黒いフレームでトランクを表現したファサードは歩く街のスケールに合い、
かつ、嵌め込まれたステンレスのメッシュとあいまって、
その一画を、高貴な雰囲気に変質させる、心地良い手品を見ているようです。
感心してボーッとしながら写真を撮っていると、若い男性が近づき、
『写真撮影は御遠慮下さい』と無遠慮に言うので、
『外観もですか?』と聞くと『はい』と、迷わず答えたので、萎えました。
 



次が、今回の視察の本命、《TOD’s JAPAN》(設計:伊東 豊雄)です。
仙台で見た《メディア・テーク》に触発され、原宿まで来てしまいました。
まだ、工事中でしたが、シートは外され、外観は見る事が出来ました。
雑誌で見た模型の印象と較べ、かなり小さい建物でした。
というより、スケール感や重量感がまったく感じられない建物でした。
四角いパッケージに、木のパターンのシールを貼ったような建物でした。
それ以上でも、以下でもない情報を伝えるための究極の手法なのでしょう。
あまりにも、《あっけない》建物なので、評価に困りましたが、
『また来てみよう』と、思わせるには充分な《あっけなさ》でした。




ついで、といってはなんですが、《LOEWE・FENDI》(設計:隈 研吾)も、
見てきました。
45pの木のルーバーが、原宿にどんなメッセージを投掛けているのか、
少し気(木?駄洒落です!)になっていたのです。
結果は思った通り、穏やかな表参道にマッチして、
風景にとけ込んでいました。なんて、スケール感の良い人なんだろう。
というより、いろんな意味で、《感の良い人》なのでしょう。
でも、木のルーバーからはみ出た『建築』のあまりに建築しているのは、
気持ちの良いものではありません。丹下健三の焼き直しのようです。




などと、勝手な事を思いながら、《ハロウィン》のパレードで賑わう
表参道を原宿駅に向かって歩き始めると、大好きだった《同順会アパート》
が無くなって、安藤忠雄が設計している工事現場の横を通ると、
味気ない仮囲いに替わって、アイビーを主体にした、
おしゃれなグリーン・アレンジメントと、
素敵な、写真で構成された広告で囲われていました。
これだけでも、『きっと、いい建物が出来あがるに違いない』と思わせます。
やっぱり、《世界の ANDO》は、『違う!』と思いました。




久しぶりに東京の建築、それも、普段縁の無いブランド建築(?)を見て、
かなり疲れましたが、それぞれが、表参道というケヤキ並木に敬意を払い、
それぞれの表現をしていることに、《一流》の凄さを感じました。