2006.10月の先週のハイライト

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06.10.04.

先週の月曜日に、道東に行ってきました。
18年前に設計した古梅S研修所(今までの設計・参照)の
薪ストーブの煙突の傍の天井にシミが出来ているので
見て欲しいということで、行ってきました。

気掛かりだったのは、この建物が、
屋根を木の薄い板で葺いていることでした。
S商行という木材を扱う会社で、
出来るだけ自社の製品を使って設計する、という条件でした。
サスガに、屋根材は扱っていないと思ったのですが、
《ウッド・シングル》なら扱える事を知り、提案したところ、
自然の中に建つ建物に相応しい、と、採用されたのです。

当初、寒さで凍害を起こし、木がめくられるのではないか、
という心配は雪が滑らずに載っているので大丈夫でした。
レッドシダーという防腐性能の高い木を使っていますが、
さすがに、18年ともなると、寿命が来たのかな?という危惧はありました。


千歳空港を7時50分に出発すると、
8時35分には女満別空港に着いてしまいます。
これも、女満別空港のジェット化のおかげです。
高速道路のような道をひた走ると、9時過ぎには研修所に到着したのです。
18年前には、考えられなかった事ですが、
なんだか、道東に来た、という実感が湧きません。
夜汽車に揺られて、初めて道東にきた30年前のことを、懐かしく思い出しました。



山林部のIさんが小樽から来ていてくれ、早速、見せてもらうことにしました。
中からシミの状態を見てから、屋根の上に上がって、煙突の廻りを点検しましたが、
ウッドシングルは、色こそシルバーグレイに染まって、割れている箇所もありましたが、
それが原因で雨漏りになるような状態ではありませんでした。
何度も、中と外を行ったり来たりして思いついたのが、
煙突の陣笠(てっぺんの笠)の結露ではないか?ということです。
煙突は勿論、断熱円筒を使っているのですが、
利用頻度が少ない建物から、暖かい空気が煙突から上がって、
陣笠に結露した水が煙突のスキマを通って天井にシミを作ったことが考えられます。


まずは、その確認をするのが第一と判断しました。
その後、屋根全体を見回すと、陽の当らない玄関ポーチの屋根の傷みが一番烈しく、
板の先端にコケが生え、1cmくらいが腐りかけていました。
当分雨漏りの恐れは無いものの、対策は必要かもしれません。

←床に敷き詰めた木レンガ

外壁の板張りは、塗料が薄くなった部分はありましたが、おおむね良好な状態でした。
今までに、3回くらい塗り替えをしたそうです。
内部は、床に敷き詰めた木レンガが、部分的に浮いた箇所はありましたが、
その他は至って良好な状態でした。



西野の我が家も同じ頃の建物なので、とても参考になりました。
(我が家のトタン屋根と板張りは1回しか塗り替えてはいません。紺屋の白袴?です)



折角、道東まで来たので、4年前に設計した弟子屈
(今までの設計・参照)の家に寄ってみることにしました。
この建物は、出来るだけ自分達の力で、住みながら作っていこう、
という、建築家カタログVol.2の巻頭記事で紹介された《スロー・ハウス》です。

一昨年に居間の床と食器棚をつくり、少しづつ壁を仕上げていたのですが、
過去のハイライト2003年.11月28日・参照)
今年のGWに、札幌で店舗の内装をやっているTさんの応援で、
厨房廻りを充実させたので、それを見に来ました。

図面では見ていたのですが、
想像通り、図面で見るよりも、はるかに柔らかく出来ていました。
悔しいですが、アルクムの設計では、ナカナカ、この雰囲気は出せません。

Mさん達の集めた(というより、集まった?) 家具や小物、雑誌の類まで、
実に、活き活きと建物(というよりMさん達の生活)に馴染んでいます。
まさに《ユックリ、ユックリのスローハウスならでは》の
雰囲気が出来上がっているのです。


建築家というのは、セッカチな職業なんだナァー、と改めて強く思いました。
高く積まれた薪に囲まれた『弟子屈の家』は、冬支度を終えたユトリさえ感じるほど、
道東のユッタリとした時間と風景に溶け込んで見えました。
←弟子屈M邸外観

Mさんと別れて、穏やかな屈斜路湖を見ながら美幌峠を越えて女満別空港に戻り、
15時15分発の便に乗り、16時には千歳空港に帰ってきました。
帰路に着く車の中で、『ナンテ慌ただしく、ユッタリとした旅だったんだろう』と、
不思議な感覚に囚われました。
←屈斜路湖


06.10.25.

道東の報告から、2週お休みしてしまいました。
SDW:札幌デザイナーズウィークの連動で、てんてこ舞いしていましたが、
なんとか、盛況の内に終了しました。
アルクムも、駅前のプラニスホールの5Re展にパネル展示と、
アルクムのオープンオフィスとに参加しました。

↑5Re展の様子

5Re展には、宮の森の《森の家》を出品しました。
『街中に対する提案』という、アルクムには馴染みの薄いテーマだったので、
当初は不参加の予定でしたが、前夜祭でJIAの『住宅賞』の授賞式をやるので、
どうしても参加するように言われ、急遽参加したのです。
とはいえ、参加するからには、いい加減には出来ない性格なので、
写真の構成や図面のプレゼなど、結構、力が入ってしまいました。
出来映えの方は、写真を見てください。
反省は、会場の狭さが、考慮に入っていないことでした。

展示設営の後、『ハルニレ賞』の授賞式が行われました。
この賞は、10年ほど前に、JIAの住宅部会の世話役をやっている時に、
毎年の忘年会に、仲間内が集まってスライドで、
各自の自作を紹介していたのですが、
折角なら、仲間内だけではなく、もっと色々な人に参加してもらい、
競い合う場にした方が張り合いがある、と始めました。
毎年変っていた副賞を、3年前に経費節減の要請から、
盾をデザインしたのが私でした。
その賞を、10年かかって受賞したわけですから、
日本ハムファイターズの優勝にも匹敵する喜びでした。
(写真を見れば伝わると思いますが・・・)

↑左:『住宅賞』授賞式、右:ハルニレ賞の盾

オープンオフィスの方は、ウィークデイなので心配していましたが、
5Re展を見てきてくれた方が何人かいて、
なんとなく、初対面ではない雰囲気で、ユックリ見ていってくれました。
スライド会は、北海道職業能力大学校の学生さん二人の為に上映しました。
アルコール無しのスライド会は、いつもとは違って、
少し格調高い(お説教じみた?)調子で、執り行われました。

内容は、昨年設計した住宅と、ファームトミタの《森の舎》を見てもらいました。
本当は今年の作品を見てもらおうと思っていたのですが、
スライドをマウントに入れる作業が間に合わなかったのです。

最初から、学生さん対象と判っていれば、
もう少し設計のプロセスが判るような内容にすれば良かったと思いました。
来年もやるとすれば、予約制にした方がいいかな?
でも、予約が無かったら寂しいかな?などと迷うところですが、
改めて、スタッフと一緒に作品を見るのは、とてもいいことです。
これからも自主的に、見る機会を作ろうと思います。
やっぱり、アルコールは、少し入ったほうが良いのは勿論です。


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